AIにいろいろ聞いて、ものすごいアイデアを手に入れたと思うところまでは良くある話ですが、それを実現できるかどうかは、どういった要素の影響が大きいですかね
非常に鋭いご指摘です。「すごいアイデアが出た!」という高揚感(いわゆる「アイデア・ハイ」の状態)と、それを「現実に着地させる」ことの間には、深くて広い谷があります。
AIとの対話で生まれたアイデアを実現できるかどうか、その成否を分ける要素は、主に以下の4つのポイントに集約されると考えます。
1. 「具体化」の解像度 (Granularity)
AIが出すアイデアは、しばしば**「正論だが抽象的」**なことがあります。実現できる人は、その抽象的なビジョンを「明日、具体的に何をするか」というレベルまで噛み砕く能力が高いです。
- タスクの細分化: 「世界を変えるアプリを作る」ではなく、「まずはログイン画面の仕様を決める」「サーバーの契約をする」といった、具体的で小さな行動に落とし込めるか。
- マイルストーンの設定: 最終ゴールまでの道のりに、小さな中間地点(成功体験)を置けるか。
2. 「熱量」の持続力 (Grit)
AIは疲れを知りませんが、人間は飽きたり、疲れたり、不安になったりします。
- 「なぜやるのか」の強さ: アイデアがどれほど優れていても、実行プロセスには必ず「地味で面倒な作業」が含まれます。その時、AIは励ましてくれますが、手を動かすのは人間です。「どうしてもこれをやりたい」という個人的な動機(熱量)がガソリンになります。
- 所有感 (Ownership): AIが出したアイデアであっても、それを「自分のもの」として愛せるかどうかが鍵です。
3. 小さく試す勇気 (MVP思考)
完璧主義は実現の敵です。実現できる人は、未完成でもいいから世に出して反応を見る**「実験思考」**を持っています。
- フィードバック・ループ: AIの予測はあくまで過去のデータに基づきます。現実社会(市場や他人)の反応は予測不可能です。
- 修正力: 最初の計画に固執せず、現実の反応を見て、AIと相談しながら軌道修正できる柔軟性があるか。
4. リソースの「組み合わせ」能力
「お金がない」「時間がない」「スキルがない」という壁に対し、どう対処するかです。
- AIを実行部隊として使う: アイデア出しだけでなく、実際のコード書き、メール文面作成、スケジューリングなど、AIを「手足」として使い倒せるか。
- 借りる力: 自分にできない部分(例:プログラミング、デザイン、営業)を、AIで補完するか、あるいは他人の力を借りられるか。
まとめ:最大の壁は「最初の一歩」
結局のところ、実現可否の最大の分岐点は、**「アイデアに満足して終わるか、今日中に最初の泥臭いアクションを起こすか」**にあります。
AIは「地図」を描くことはできますが、実際にその場所へ「歩く」ことは人間にしかできません。
あと、よくあるのが、仕組みや運用を考えたとして、システムさえできればうまくいくと思い込んでいる人も多いですよね
本当におっしゃる通りです。それは**「箱(システム)を作れば、中身(人や熱狂)は勝手についてくる」という錯覚**ですね。
いわゆる『フィールド・オブ・ドリームス』的な誤解(「作れば、彼らはやってくる」)ですが、現実のビジネスやプロジェクトでは、システムが完成した瞬間がゴールではなく、そこからが本当の戦いです。
システム偏重になりがちな人が見落としがちな、「システムの外側」にある重要な要素を整理してみましょう。
1. 「流通(Distribution)」の壁
「素晴らしいシステム」と「使われるシステム」は別物です。 どれだけ効率的な運用フローを組んでも、それを誰が、どうやって知るのか? という導線がなければ、無人島に超高層ビルを建てるようなものです。
- 認知のコスト: ターゲットとなるユーザーにその存在を知らせるのに、どれだけの労力(広告費、営業工数)がかかるか。
- スイッチングコスト: ユーザーが今使っている「不便だけど慣れた方法」を捨ててまで、新しいシステムに乗り換える動機付けができるか。
2. 人間の「感情と慣性」
AIと一緒に考えると、どうしても「論理的に正しいフロー」が出来上がります。しかし、人間は論理だけでは動きません。
- 面倒くささ: 「登録が3ステップ多い」「画面が見慣れない」といった些細な理由で、人間は簡単に離脱します。
- 現場の抵抗: 企業内での導入であれば、「自分の仕事が奪われる」という恐怖心や、「新しいことを覚えるのが億劫」という現場の感情的な抵抗が、完璧なシステムを無力化することがよくあります。
3. 「運用」という泥臭い現実
「システム=全自動」と思われがちですが、初期段階では必ず**「人力による尻拭い」**が発生します。
- 例外処理: システムが想定していない「イレギュラーな事態」が起きたとき、誰が対応するのか?
- データ入力: そもそも、そのシステムに入れる正しいデータは誰が担保するのか?
AIで作ったプランは「理想的な状態(摩擦係数ゼロ)」を前提にしがちですが、現実は摩擦だらけです。
「システム」ではなく「体験」をデザインできているか?
成功する人は、「システム(System)」ではなく「体験(Experience)」を設計しています。
- × 失敗する思考: 「高機能な予約システムを作ったから、客が来るはずだ」
- ○ 成功する思考: 「客が予約システムを使うとき、どんな不安があるか? その不安を解消するために、システム以外のサポート(電話対応やFAQ)はどうあるべきか?」
今お手元にある「すごいアイデア」には、そのシステムを使う生身の人間(ユーザー)が、具体的にどんな顔をして、どんな感情で使い始めるか、というイメージは含まれていますでしょうか?
システム化するということは、要求の整理という部分、もしくはもうすこし進んで、要件を確定するためのAI支援というところまでかと思いますが、そこで仮に、やるべきことが決まった。つまりは機能要件が決まった。という前提において、その先に、何を具体的に決めていくのがよいのかを時系列であげますので、その点についての認識があるのかどうか、なければその部分をについては相当な予算を必要とします。
整理すると
時系列としては、以下のように進みます。
- 機能要件(決まった) ↓
- 非機能要件(どれくらい丈夫で速いか決める) ↓
- UI/UX設計(見た目と使い心地を決める) ↓
- 技術・データ設計(作り方を決める) ↓
- 業務・運用設計(人間がどう動くかを決める ※開発と並行して進めるのが理想)
多くのプロジェクトでは、「5. 業務・運用設計」が後回しにされ、リリース直前に「これ、誰が承認するんだっけ?」「エラーの時どうすんの?」と大混乱になります。
システムが複雑怪奇というよりも、人間がなんとかするからいいよという前提で何も考慮されていないと、運用がまわらないなんてよくあることですよ。だからエンジニアがなぜか保守なのか維持管理なのか改造なのか改修なのか破壊なのかわからない状態でつきっきりのシステムなんてのも多いんですよ。
フェーズ1:システムの「基礎体力」を決める(非機能要件)
機能(What)が決まったら、次は品質(How)を決めます。ここが曖昧だと、後で「遅い」「落ちる」「漏れる」といった問題が起きます。
- 性能・拡張性 (Performance/Scalability):
- 「3秒以内に画面が表示されないとダメか?」「将来ユーザーが100倍になっても耐えられるか?」
- 可用性 (Availability):
- 「24時間365日止まってはいけないのか、夜間メンテナンスで止めてもいいのか?」
- セキュリティ (Security):
- 「個人情報はどのレベルで暗号化するか?」「誰がデータにアクセスできる権限を持つか?」
フェーズ2:ユーザーの「体験」を決める(UI/UX・情報設計)
「機能がある」ことと「使いやすい」ことは別です。
- 画面遷移と情報設計 (Wireframe/Flow):
- ユーザーが迷子にならない動線はどうあるべきか?(例:購入完了まで何クリックか?)
- 例外時の振る舞い:
- 「エラーが出たとき、ユーザーにどう表示するか?」(単に"Error 500"と出すか、親切な案内を出すか)
フェーズ3:デジタルの「骨格」を決める(技術・データ設計)
ここは専門的なエンジニアリング領域ですが、ビジネス視点での判断も必要です。
- 技術選定 (Tech Stack):
- 開発スピード優先の技術を使うか、安定性重視の技術を使うか?(採用のしやすさにも影響します)
- データモデル (Data Modeling):
- 「顧客」と「注文」をどう紐づけるか? データの持ち方は将来の分析のしやすさを左右します。
フェーズ4:人間の「動き」を決める(業務運用設計)
※ここが前回のお話にあった「システムさえあればいいという思い込み」を防ぐ最重要ポイントです。
- システム外のワークフロー:
- システムが自動処理できないイレギュラー(例:住所間違い、決済失敗)が発生した時、誰が、どう連絡を取り、どう修正するか?
- マスタ管理・メンテナンス:
- 商品データや社員アカウントの追加・削除は、誰がいつ行うのか?
- 問い合わせ対応:
- ユーザーが操作に迷った時の窓口は? FAQで返すのか、チャットボットか、人か?
フェーズ5:ゴールの「基準」を決める(KPI・リリース戦略)
作りっぱなしにしないための準備です。
- 成功指標 (KPI) の定義:
- 「システムが完成した」ではなく、「何人が使い、どれくらい売上が上がったら成功とするか?」の数字。
- リリース戦略:
- いきなり全員に公開するか(ビッグバン)、一部の部署/ユーザーでテストしてから広げるか(スモールスタート)。