React Compiler時代の設計指針

2026年01月14日

―「最適化を書く」から「正しく書く」へ

旧来の設計思想(〜2024)

  • 再レンダリングは「危険」
  • 依存配列は人間が管理
  • パフォーマンスは開発者の責任

この思想のもとで、

  • useMemo
  • useCallback
  • React.memo

日常的な儀式になっていました。


React Compiler時代(2026〜)

設計指針は明確に変わります。

原則1:「純粋な関数として書く」

  • props / state / context 以外に依存しない
  • 外部可変状態を読まない
  • 副作用は useEffect に閉じる

→ コンパイラが安全に最適化できる形になる。


原則2:再レンダリングを恐れない

  • 再レンダリング ≠ 再計算
  • 再レンダリング ≠ DOM更新

React Compilerは
**「どこが再計算され、どこがスキップできるか」**を
人間より正確に判断します。

原則3:「最適化は例外」になる

  • useMemo/useCallbackは
    • 大規模データ
    • WebGL / Canvas
    • 独自フックの境界
      など明確な理由がある場合のみ

→ 書いている時点で「設計レビュー対象」。

設計思想まとめ

項目BeforeAfter
最適化書くもの任せるもの
レビュー依存配列データフロー
主戦場Hooksコンポーネント設計

② useMemoを書かないReactコード例

―「怖くない」ことを体感する

❌ 旧来のコード(典型例)

const filteredUsers = useMemo(() => {
  return users.filter(u => u.active);
}, [users]);

const handleClick = useCallback(() => {
  doSomething(filteredUsers);
}, [filteredUsers]);

問題点:

  • 本質より「依存配列管理」が前面に出る
  • レビューが最適化議論で消耗

✅ React Compiler前提のコード

function UserList({ users }) {
  const activeUsers = users.filter(u => u.active);

  const handleClick = () => {
    doSomething(activeUsers);
  };

  return (
    <button onClick={handleClick}>
      {activeUsers.length} users
    </button>
  );
}

何が起きているか

  • React Compilerが
    • users が変わらなければ再計算しない
    • handleClick を安定化
  • 人間は何も書いていない

💡 書かないことで得られるもの

  • ロジックが一目でわかる
  • バグの温床(依存漏れ)が消える
  • 型推論・Lint・AI補完が効きやすい

書いていいケース(例外)

const points = useMemo(() => heavyCalc(data), [data]);
  • 「なぜ必要か説明できる」
  • チーム内で合意されている

→ これが正しいレガシー化です。

③ Laravel + React(Inertia / SPA)での影響整理

― フルスタック設計が静かに変わる

ここが一番重要です。


Inertia構成での変化

Before

  • ページ単位でstate管理
  • props変更による再描画を警戒
  • useMemo 多用

After

  • propsはそのまま使う
  • データ変換はコンポーネント内でOK
  • パフォーマンスはCompilerに委譲
export default function Index({ users }) {
  const activeUsers = users.filter(u => u.active);

  return <UserTable users={activeUsers} />;
}

→ Laravel側の責務(データ整形)が減る。


Laravel側への波及効果

Controller / API設計

  • 「加工済みデータを返す」必要が減る
  • 正規化された生データを返す方が良い
return Inertia::render('Users/Index', [
  'users' => User::all(),
]);

SPA構成(API + React)の場合

状態管理の簡素化

  • Redux / Zustand の selector 最適化が激減
  • 「selectのメモ化」文化が後退

API設計への影響

  • レスポンスを恐れず細かく分けられる
  • 再描画コストを過剰に気にしない

チーム開発への影響(重要)

レビュー観点が変わる

以前これから
useCallback必要?データフロー正しい?
再レンダリング多くない?責務分離できてる?

新人教育が激変

  • Hooks地獄から解放
  • **「React=UI関数」**として教えられる

総まとめ(3点共通)

  1. 書かないことが正解になる
  2. 設計がそのまま性能になる
  3. Laravelとの境界が自然になる

これは最適化技術の進化ではなく、
Reactが「設計のフレームワーク」へ成熟した結果です。


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