システム開発とは、企業や組織が抱える課題を解決したり、業務を効率化・自動化したりするための「仕組み」です。
コンピュータ上でのソフトウェアを技術を用いて作り上げる一連の工程(プロセス)を指します。
システム開発の目的は、その開発によって異なりますが、業務的なシステムにおける目的で多かったのは業務効率化、生産性向上、データの管理や分析、ユーザー満足度の向上などとなります。一方、新たなサービスを企画立案するシステム開発においては、さらに多様な目的があります。
サービス企画・新規事業開発における多様な目的 🚀
業務効率化などの内部目的に対し、新規サービス開発における目的は、主に市場・顧客への価値提供とビジネス成長に焦点を当てます。
| 目的 | 詳細 |
| 新規収益源の確立 | 今までになかった新しいサービスや商品を提供することで、新たな市場を開拓し、企業の売上や利益の柱を作る。 |
| 市場シェアの獲得 | 競合他社に先駆けて、特定のニッチ市場や成長市場で優位な立場を確立し、顧客を囲い込む。 |
| 顧客体験 (CX) の向上 | 既存顧客や新規顧客に対し、より便利で感動的な体験を提供し、ロイヤリティ(愛着)を高める。 |
| ブランドイメージの革新 | 最新技術を取り入れたサービスを提供することで、「先進的」「革新的」といったポジティブなブランドイメージを構築する。 |
| データの収集と活用 | サービス利用を通じて、ユーザーの行動や嗜好に関する貴重なデータを収集し、それを次のビジネス戦略やサービスの改善に活かす。 |
| エコシステムの構築 | 他社や他のサービスと連携し、相互に利益をもたらす**経済圏(プラットフォーム)**を作り、自社の優位性を強固にする。 |
| 社会課題の解決 | 環境、医療、教育などの社会的な課題をITの力で解決し、企業価値と社会的責任(CSR)を両立させる。 |
新規サービス開発では、これらの目的を達成するために、MVP (Minimum Viable Product: 顧客に価値を提供できる最小限の製品) を短期間で開発し、市場の反応を見ながら改善していくアジャイルなアプローチが取られることが多いです。
アジャイルなアプローチ(アジャイル開発)というのは、それは「小さく始めて、試して、すぐ直しながら開発する」という、柔軟でスピーディーな開発の進め方です。
一方で、これまで大規模なシステム開発ではウォーターフォール型という、各工程が完了したら次の工程に進む開発手法に慣れた人はアジャイル的なアプローチはまったく対応できない人が多いのも事実です。したがって、小さい規模であっても、ウォーターフォール型での開発を行い、そこで直面する課題はありました。
「ウォーターフォールに慣れた人がアジャイルに対応するのは難しいのではないか」という懸念は、多くの組織がアジャイル移行を検討する際に出てくる最も重要な課題の一つです。
これは、単に「進め方の違い」というだけでなく、仕事に対する根本的な「考え方(マインドセット)」の違いに起因するためです。
🧠 ウォーターフォール開発者が直面する主な課題
ウォーターフォール(滝のように上流から下流へ進む)に最適化されたスキルやマインドセットを持つ方は、アジャイルへの移行時に以下のような壁にぶつかることがあります。
1.完璧なドキュメント志向からの脱却
| 違い | ウォーターフォール | アジャイル |
| 重視点 | すべての仕様を完璧に文書化してから開発に進む。 | 動くソフトウェアを重視し、ドキュメントは必要最低限に抑える。 |
| 課題 | **「まず仕様をすべて決めなければ」**という意識が強く、短期間での開発スタートに抵抗を感じる。 |
2.コミュニケーションの頻度と質
| 違い | ウォーターフォール | アジャイル |
| コミュニケーション | 公式の会議や分厚いドキュメントを通じた間接的な連携が中心。 | チーム内での**デイリースクラム(朝会)**など、非公式で対面での頻繁な会話が中心。 |
| 課題 | 「自分の仕事は完了」とした後、他のチームとの連携が減りがちで、アジャイルに必要な常に顧客や開発者同士で対話する姿勢が身につきにくい。 |
3.役割の縦割り構造(スペシャリスト意識)
| 違い | ウォーターフォール | アジャイル |
| チーム構成 | 要件定義担当者、設計者、プログラマー、テスターなど、役割が明確に分かれている(縦割り)。 | チーム全員で、要件定義からテストまで一通りこなせる能力が求められる(クロスファンクショナル)。 |
| 課題 | **「私はテスターなので、設計は担当外だ」**という意識が壁となり、チーム全体で協力して進めるアジャイルの原則に対応しづらい。 |
✨ 乗り越えるためのアプローチ
しかし、ウォーターフォール開発での経験が無駄になるわけではありません。これらの課題を乗り越えるために、多くの組織が以下のような工夫をしています。
- 段階的な移行(ハイブリッド型)の導入:
- 最初からすべてをアジャイルにするのではなく、システムの要件定義や大枠の設計まではウォーターフォールで進め、詳細な実装段階からアジャイルの手法(スプリント)を取り入れるなど、両者の良いところを組み合わせる方法です。
- トレーニングとコーチの活用:
- アジャイルの「プロセス」だけでなく、なぜそうするのかという「考え方」を理解するための研修や、経験豊富なアジャイルコーチをチームに迎え入れ、実践を通じて学んでもらう機会を提供します。
- 小さな成功体験の積み重ね:
- まずは小さなプロジェクトや新機能開発など、失敗しても影響の少ない範囲でアジャイルを試行し、「小さく始めて、試して、すぐ直す」ことのメリットを体感してもらうことで、マインドセットの変化を促します。
ウォーターフォールで培った**「計画通りに進捗管理する能力」や「高品質なドキュメントを作成する能力」は、アジャイル開発においてもリリース計画の策定や品質維持**に活かせる重要なスキルです。
大切なのは、**「変化を恐れず、常に改善していく」**というアジャイルの核となる考え方を受け入れることだと言えます。
このようにシステム開発の世界では、開発手法も様々ある中で、特に小規模から中規模の開発では、短納期、低予算のプロジェクトが多くなり、明らかにアジャイル的な開発が必要とされてきています。
一方で、その手法に対応できるかどうかは開発会社によるところとなります。もっというとエンジニアによるといえます。