AIをAPIで利用する、から、エージェントとして自律させる

2025年11月10日

「AIをAPIで利用する」から「AIエージェントを自立させる」までの流れは、技術的にも思想的にもとても重要なステップです。順に整理して説明します。

🧩 第1段階:AIをAPIとして利用する(利用=指示された仕事をこなすAI)

これは、外部アプリケーションや開発したシステムからAIの能力(文章生成・画像生成・音声解析など)をAPIを利用して呼び出し、特定の処理を担わせることになります。さまざまな言語でAPIを利用する手順が用意されているから、わざわざAIを0から作るなんてことをしなくてもAIの機能を利用することができるのです。

この段階のAIの特徴

  • 「命令待ち」
  • 状態を持たない(=ステートレス)
  • 思考や目標は外部(あなた)に依存している

手帳學のAIチャットでは、OpenAIのAPIを利用して、まさしくAIをAPIで利用しているのです。その際に、AIがどのように対応してほしいかをあらかじめ用意したプロンプト、または動的に生成しているプロンプトを与えることによって役割を担ってもらっているのです。APIで利用すること自体は簡単な事ですが、どのように対応してほしいのか、何を実現して欲しいのかはプロンプト設計に大きくかかわる部分です。

⚙️ 第2段階:AIを「エージェント」として動かす(=指示を受けて自律的に判断するAI)

目的

AI自身が「タスクを理解し」「分解して」「必要な情報を集め」「次に何をするかを決める」

主なフレームワーク

  • LangChain(Python, JS対応)
  • LlamaIndex
  • Autogen(Microsoft)
  • CrewAI / AutoGPT / BabyAGI など

エージェントの内部構造

コンポーネント役割
Goal / Mission何を達成したいのか(明示的な目的)
Memory過去の対話・行動履歴を保存して利用
ToolsWeb検索、DB操作、ファイル生成、API実行など
ReasoningChain-of-Thought的な推論過程
Action Loop「考える → 行動する → 評価する → 次へ」サイクル

例として自律タスク処理の流れとして会社概要の更新の依頼の流れを示すと、

ユーザー:「会社概要ページを更新して」

AI:

  1. ページ構造を分析(DB/HTML参照)
  2. 最新の会社情報を検索
  3. 更新案を作成
  4. 修正コードを出力 or Gitにプッシュ




🌱 第3段階:エージェントの「自律」(=持続的に学び・判断・行動するAI)

目的

人間の監督なしに、AI自身が「価値判断・優先順位付け・改善」を行う。

技術的要素

  • 長期記憶(VectorDBなどに経験を蓄積)
  • 目標更新ロジック(Goal Refinement)
  • 他エージェントとの連携(協調AI)
  • 安全制御(ガードレール・評価システム)

例:開発中のAIにおける自立型AI対象

  • 「人生史作成AIエージェント」:蓄積した回答をもとに、各世代における人生史概要を更新する。また当時に、各世代間の関係性を調査したうえで人生史全体をまとめる。
  • 「人格AIエージェント」:役割や要求する文体、目的に合わせて発話スタイルを選択し、対応の仕方を変化する。
  • 「プロジェクトマネジメントAIエージェント」:プロジェクトの進捗を記録し、次の行動提案を生成する。(進捗遅れに対する改善スケジュールの提案など)

将来的な方向性

  • API経由で「AIがAIを呼ぶ」構造(多層AI)
  • AIによる環境維持、環境改善。コード生成・テスト・自己修正
  • ユーザーとの「共進化」(学習型エコシステム)

🚀 今後の発展ロードマップ

フェーズ概要主要技術
Phase 1(完了)Laravel APIからOpenAI呼び出しChatCompletion API, Embedding API
Phase 2(11月検証)Laravel + LangChainJS でタスク分解Tool呼び出し, RAG
Phase 3(12月検証)AIエージェント同士の連携(Planner, Worker)Autogen, Agent-Orchestrator
Phase 4(環境構築済み、評価中)永続メモリ+自律改善PostgreSQL+pgvector, 評価ループ
Phase 5(12月検証)自立型AI(フェローAI群)Goal-driven Multi-Agent System

🧩AIエージェントを実現するフレームワークの調査

エージェント型AI(Agentic AI)を実現するための主要フレームワーク/SDKの調査をまとめます。ご自身のプロジェクト(例えば、Laravel+API連携+エージェント化)に応用できる視点も併せて記載します。

✅ 主要なフレームワーク/SDKと特徴

1.LangChain

大規模言語モデル(LLM)を使ったアプリケーション構築のための「フレームワーク兼ライブラリ」。 Dr. AI Academy+2SuperAGI+2

エージェント構成に必要な「ツール連携」「記憶(Memory)」「タスク分解」「ループ(思考→行動)」といった機能を備えている。 mustafabubakar.com+1

カスタマイズ性・拡張性が高いが、学習コスト・実装コストも比較的高め。 mustafabubakar.com+1

プロジェクトへの応用視点:LaravelでAPIを呼んでいるので、バックエンドでLangChain(Python/JavaScript)を利用し、その上で「プロジェクトマネジメントエージェント」「マルチテナント店舗推薦エージェント」「手帳學伴奏支援フェローエージェント」などを構築可能。

2.AutoGPT & BabyAGI

AutoGPT:ユーザーの目標(Goal)を与え、LLMがそれを細分化→実行→結果評価というループを回すオープンソースプロジェクト。 Medium+1

BabyAGI:AutoGPTをさらにシンプルにした、タスクキュー型のエージェントフレームワーク。 mustafabubakar.com

特徴・注意点

  • 実験的・プロトタイプ用途に強い。 mustafabubakar.com
  • 生産環境(プロダクション)で使うには注意が必要(制御性・信頼性・コスト面)という指摘あり。 Medium

応用視点:プラットフォームの初期段階で「まずエージェントの動く仕組みを試す」には向いている。例えば「エントリの進捗を自律的に確認し、次アクションを提案する」などのPoCに利用するなど。

3.OpenAI Agents SDK

OpenAI が提供するエージェント構築用SDK。マルチエージェントワークフローを比較的軽量に実装できる仕組み。 OpenAI GitHub+2GitHub+2

プロバイダー非依存(OpenAI以外のLLMもサポート)という記述あり。 GitHub

特徴

  • エージェントが「ツール呼び出し」「他エージェントへのハンドオフ(引き継ぎ)」などを行える。 GitHub+1
  • 比較的最新で、プロダクション利用を視野に入れた選択肢になりつつある。

応用視点:あなたの「週次/月次でエントリをレビューして次の行動を提案」「店舗データを定期収集し、レコメンドを生成」というような、複数タスク+継続的運用を想定するなら、このSDKが有力である。

4.AutoGen

ルチエージェント対話・協調のためのオープンソースフレームワーク。 Medium+1

5.LangGraph/CrewAI

エージェントオーケストレーション(複数エージェントの連携)にフォーカス。 Relari+1

6.Semantic Kernel

マイクロソフト系で、エージェント開発にも活用可との記述あり。 Daffodil Software

🧠 比較:選定時のチェックポイント

エージェント型AIを導入・実装する際、フレームワーク選定で確認しておいた方が良い点を整理します。

項目説明
目的/ユースケース単発の指令実行型か、継続的・複雑なタスク遂行型か。目的に応じて適切な構成が変わる。
ツール連携の容易さ外部API呼び出し、データベースアクセス、Webスクレイピングなどを「エージェントが自分で」実行できるか。例えばLangChainやOpenAI Agentsはその点が強い。
記憶・コンテキスト管理過去の行動やデータを元に次の判断をする必要があるなら、Memory機構のあるフレームワークを選ぶ。
マルチエージェント/オーケストレーション複数のエージェントが協調してタスクを分担するなら、マルチエージェント対応の仕組み(ハンドオフ、役割分担)が重要。
スケーラビリティ・安定運用プロダクション運用を視野に入れるなら、エラーハンドリング、監視・ログ、コスト制御、セキュリティ(不適切な振る舞い防止)など。
開発言語/運用環境適合性あなたがLaravel(PHP)を中心にされているなら、バックエンドにPython/NodeJSでエージェントサーバを立ててLaravelとAPIで連携、という構成も考えられる。
コスト・トークン消費LLMの呼び出し回数/長時間動かすループ/ツール実行コストなど。特に自律ループはトークン・API呼び出しが肥大化しがち(AutoGPTの注意点)。

📋 実践的ステップ案

「Laravel+OpenAI埋め込み+エージェント構築」の構想を踏まえ、エージェント化に向けたステップ案を提示します。

初期プロトタイプ(エージェント化のPoC)

  • 使用フレームワーク:AutoGPTや簡易なLangChain構成
  • 目的例:「エントリ登録後、自動で次のアクション候補を3件提示」
  • 実装:LaravelからAPIでPython/Nodeサーバ(LangChainベース)に「新規エントリ」「現在の状態」「目標」を送信 → エージェントがツール(DB参照・過去ログ検索)を使ってアクション案を生成 → Laravelが受け取り表示。

中期運用構成(継続的・複数タスク)

  • 使用フレームワーク:OpenAI Agents SDK または LangChain
  • 目的例:
    • マルチテナントECサイト基盤:店舗データを定期収集し、更新・経営分析後に改善提案を生成
    • プロジェクトマネジメント:ユーザの進捗をモニタリングし、未完了タスクを検出、リマインド・次行動を設計
  • 実装ポイント:
    • ツール集合(WebスクレイピングAPI/DB/通知サービス)をエージェントが呼び出せる構成
    • メモリ・コンテキストを設けて「過去のログを参照」
    • モニタリング/ログ出力機構を設けてエージェントの振る舞い監査可能に。

長期・自律運用構成(エージェントが改善・学習するフェーズ)

  • 使用フレームワーク:LangChain+補助的にAutoGen/Agent Orchestration系
  • 目的例:
    • エージェントが自身のパフォーマンスを分析し、次の行動に対しての意思決定を行う。
  • 実装ポイント:
    • 長期記憶(例:PostgreSQL+pgvector)に蓄積された文章の意味のマッチングを行う
    • 「目標更新ロジック」「自己振り返りループ」を備えた運用設計
    • 安全ガードレール(不適切な行動回避・監査ログ)を確保。

📝 補足・注意点

自律エージェント導入は非常に強力ですが、「何でも勝手に動く=リスクあり」です。特に「データ誤用」「ループ地獄」「コスト無制限」のリスクが指摘されています。例えばAutoGPTでは「無限ループに陥る」「信頼性が低め」といった注意点があります。 Medium

フレームワーク選びだけでなく、**運用設計(ガードレール・ログ・監査)**が重要です。 OpenAI CDN

既存技術スタック(Laravel, PostgreSQL+pgvector,社内構成)をどうエージェント化パイプラインに結びつけるかが鍵です。バックエンドをPHPに対し、エージェント部分をPython/Nodeで切り出す構成が良いです。

🧩主要AIエージェントフレームワーク比較表(2025年最新版)

フレームワーク名詳細(概要・強み・弱み・向いている用途)
LangChain概要: LLMアプリ構築の定番フレームワーク。ツール連携・メモリ・RAG・チェーン構成に対応し、最も広く使われている。

強み: 高い拡張性と豊富なコンポーネント。多様なLLM・DB・外部APIとの統合が容易で、商用採用実績も多い。

弱み: 学習コストが高く、依存関係が複雑になりやすい。構成設計を誤ると管理が煩雑。

向いている用途: 自律分析エージェント、AIチャットアシスタント、RAG検索、文書要約、業務支援ツールなど。
AutoGPT概要: LLMが目標を自律的に分解・実行・検証するループ構造を持つオープンソースAIエージェント。

強み: 設定がシンプルで、最小限の記述で「自律行動」を試せる。実験・研究向けとして人気。

弱み: 制御が難しく、暴走・コスト膨張・タスク逸脱のリスクあり。プロダクション運用には不向き。

向いている用途: 概念実証(PoC)・技術検証・研究実験・短時間タスク自動化。
BabyAGI概要: AutoGPTを簡略化した軽量フレームワーク。タスクをキューに登録し、順次処理する設計。 強み: コードが短く構造が理解しやすい。初学者でもエージェント構造の理解に適している。 弱み: 機能が限定的で、大規模連携や複雑な思考チェーンには対応しづらい。 向いている用途: 教育・デモンストレーション・軽量タスク処理・AI構造理解の学習用途。
OpenAI Agents SDK概要: OpenAI公式の新SDKで、マルチエージェント・ツール呼び出し・ハンドオフ機能を統合。

強み: 安定性・セキュリティ・API連携の一貫性が高く、商用利用に耐えうる設計。

弱み: 新しいため情報が少なく、LangChainよりサードパーティ例が少ない。

向いている用途: 企業・プロダクション環境でのエージェント構築、チーム開発、API駆動型ワークフロー。
AutoGen(Microsoft)概要: 複数のAIエージェントが対話・協調してタスクを遂行する仕組みを提供するフレームワーク。

強み: 複数AIの役割分担・相互評価・結果統合などが自動化できる。複雑な業務タスクにも対応。

弱み: 単一エージェント利用には冗長で、セットアップも重め。

向いている用途: チームAI・ソフトウェア開発補助・AIペアプログラミング・複雑業務オーケストレーション。
LangGraph / CrewAI概要: LangChain互換のエージェント連携特化フレームワーク。ノードベース構造で状態管理と可視化に優れる。

強み: 各エージェントの動作・遷移をグラフ構造で管理でき、デバッグ・チューニングが容易。

弱み: 比較的新しく実績が少ない。構築手順が安定していない部分もある。

向いている用途: 複数エージェント連携シナリオ、業務プロセスの視覚化、複合タスク制御。
Semantic Kernel(Microsoft)概要: Microsoftが開発するAIオーケストレーション基盤。スキル(関数)とプランナーによってエージェント的行動を制御。

強み: Azure/Office系サービスとの統合が強力で、エンタープライズ用途に最適。

弱み: LLM依存が強く、カスタムLLMや外部ツール連携の自由度は低い。

向いている用途: 社内システム連携・業務自動化・クラウド統合AI・セキュアな業務支援エージェント。

🧠 Laravel環境における実証実験対象エージェントフレームワーク

No.目的推奨フレームワーク補足
AIが指令を理解し、タスクを自動分解して提案するBabyAGI / AutoGPTコンセプト実証・動作確認向け。コスト注意
Laravel ↔ Python連携で、AIが「提案・判断・実行」を繰り返すLangChain JS / PythonAPI経由でタスク依頼・結果をDB保存。Memory実装可
複数AI(例:分析AI+提案AI+ライターAI)が協調OpenAI Agents SDK / LangGraphオーケストレーション構成、安定運用可
AIが定期的に自己評価・改善・再学習LangChain+pgvector+AutoGen永続メモリ・自己改善ループ実装可能

🌍 今後の方向性キーワード

概念内容今後の展望
Agentic WorkflowAIがタスクを分解し、外部APIを使って目標を遂行業務代行AIの基盤として発展中
Multi-Agent Collaboration役割分担型のAIチーム(例:Planner/Coder/Reviewer)開発・教育・営業など各分野で活用
Goal-Oriented Memory長期目標に基づくメモリ・記憶強化個人アシスタントや学習履歴管理に重要
Guardrails / Policy EnforcementAI行動の制御と安全監査法規制・セキュリティ対策上必須

コンピュータ上で何を作成しているのであれば、それは、もはや人であってはならない。そのすべてはAIに任せるべきであり、人はそれらを制御し、自動化し、安全に動作した結果を得られるように設計できるようにしなければならない。そのための準備はここにある。

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