台湾の牛肉麺と逆輸入カルチャー

複雑な歴史的背景から生まれた固有のスパイス文化と、「台湾ラーメン」という日台のねじれ現象。

台湾の代表的な麺料理「牛肉麺(ニューローミェン)」。
それは、戦後の激動の中で中国各地の食文化が台湾という島で融合して生まれた、歴史の結晶です。

牛肉麺(ニューローミェン)の誕生

1949年以降、中国大陸から台湾へ移り住んだ人々(外省人)の中には、四川省出身者やイスラム教徒の回族(牛肉を主体とする食文化)が含まれていました。
彼らが持ち込んだ「豆瓣醤(トウバンジャン)」の辛味と、特有のスパイス(八角・五香粉など)を使った濃厚な醤油ベースのスープが組み合わさり、現在台湾の国民食となっている「紅焼牛肉麺」が確立されました。

八角(スターアニス)という明確な境界線

日本の醤油ラーメンと台湾の牛肉麺スープを決定的に分けるのが「八角(トウシキミ)」の存在です。

甘く、そして薬品のような強烈な清涼感を持つこのスパイスは、肉の臭みを消すだけでなく、スープ全体にエキゾチックで複雑な香気を与えます。日本のラーメンが「出汁の旨味の純度」を高める方向へ進化したのに対し、台湾の麺料理は「スパイスによる香りの重層化」というベクトルを持っています。

「台湾ラーメン」というねじれ現象

日本国内で「台湾ラーメン」や「台湾まぜそば」と呼ばれるジャンルをご存知でしょう。
実はこれらは台湾には存在しません。(※近年は逆輸入的に台湾で販売されるケースもあります)

名古屋(味仙)発祥のムーブメント

1970年代に、名古屋の台湾料理店「味仙」の台湾人店主が、台湾の「担仔麺(タンツーメン)」をベースに、激辛にアレンジして賄いとして作ったのが「台湾ラーメン」の起源です。
この「ニンニク・唐辛子・豚挽肉」のパンチが効いた「台湾ミンチ」の概念は、その後2000年代に「台湾まぜそば(麺屋はなび発祥)」としてさらに進化し、日本のラーメン界における一種の「ご当地(名古屋)ジャンル」として強固な地位を築きました。

台湾のスパイス文化と、日本独自の「台湾ラーメン」という独自の進化。
では、海を越えたアメリカ大陸では、「Ramen」はどのように受容されているのでしょうか。

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