これから事業を始める方や、ECサイト構築などを通じて事業拡大を計画されている中小企業・個人事業主の皆様へ、返済不要の事業資金「補助金」について解説します。
ECサイトの構築や事業拡大にはコストがかかりますが、国や自治体の制度をうまく活用すれば、その負担を大きく減らせることをご存知ですか?
国や自治体には、返済不要の資金で事業をサポートしてくれる「補助金」という心強い制度があります。この記事では、補助金・助成金の世界を、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。
この記事でわかること
資金調達の話でよく耳にする「補助金」と「助成金」。どちらも返済不要のお金ですが、その性質は大きく異なります。まずは、この2つの違いをしっかり理解しておきましょう。
両者の主な違いを、下の表で比べてみましょう。
| 比較項目 | 補助金 | 助成金 |
| 目的 | 新規事業や設備投資など、国の政策実現 | 雇用の安定や労働環境の改善など |
| 管轄 | 主に経済産業省、中小企業庁、自治体など | 主に厚生労働省 |
| 受給の難易度 | 審査があり、採択されない場合もある(競争) | 要件を満たせば原則受給できる |
| 公募期間 | 期間限定(1週間〜1ヶ月程度が多い) | 通年で募集していることが多い |
| 予算 | 予算上限に達すると期間内でも終了する場合がある | 予算が比較的安定している |
つまり、新しいチャレンジを目指すなら「補助金」、雇用を守り育てるなら「助成金」と覚えておくと分かりやすいでしょう。では次に、ECサイト構築や事業拡大に具体的に使える5つの主要な補助金を見ていきましょう。
国が提供する補助金には様々な種類がありますが、ここでは特に中小企業が使いやすい主要な5つの制度をピックアップしてご紹介します。まずは全体像を掴んでみましょう。
| 補助金名 | こんな人におすすめ! | 補助額(最大) |
| 事業再構築補助金 | 思い切った新事業や業態転換に挑戦したい事業者 | 最大7,000万円(従業員規模等による) |
| ものづくり補助金 | 革新的な新製品・サービス開発のための設備投資をしたい製造業者など | 最大2,500万円(従業員規模等による) |
| 小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者が販路開拓や生産性向上に取り組みたい場合 | 最大50万円(通常枠) |
| IT導入補助金 | ITツールを導入して業務効率化や生産性向上を図りたい事業者 | 最大450万円 |
| 中小企業省力化投資補助金 | IoTやロボットなどを導入して人手不足を解消したい事業者 | 最大1,500万円 |
※表中の補助額は通常枠や基本要件での上限です。大幅な賃上げ等の追加要件を満たすことで、上限額が引き上げられる場合があります。
それでは、一つひとつの補助金を詳しく見ていきましょう。
国の大きな制度だけでなく、もっと身近な自治体にもチャンスがあります。次に、お住まいの地域で探せる補助金の例を見てみましょう。
国の補助金に加えて、都道府県や市区町村といった各自治体も、地域の中小企業を支援するために独自の補助金制度を設けています。ぜひ「(あなたの自治体名) 補助金」で検索してみてください。
国の制度よりも対象が絞られている分、より自社のニーズに合ったものが見つかるかもしれません。
【具体例】
これらの例のように、ECサイト構築に特化したものなど、よりピンポイントな支援があるのが特徴です。ただし、自治体の補助金は予算規模が小さく、公募期間も短いことが多いです(上記の2制度も令和6年度分は受付を終了しています)。こまめに自治体のホームページをチェックすることが重要です。
このように魅力的な補助金ですが、申請する前にはいくつか知っておくべき大切な注意点があります。失敗しないために、次のポイントを必ず押さえておきましょう。
補助金は事業の追い風になりますが、良いことばかりではありません。申請してから後悔しないために、以下の4つの注意点を必ず頭に入れておいてください。
申請手続きは想像以上に大変 補助金の申請は、申込書を一枚書けば終わり、という簡単なものではありません。事業の目的や将来性、資金計画などを詳細に記述した事業計画書の作成が必須です。また、電子申請には「gBizIDプライム」というアカウントが必要で、この取得には1〜2週間かかることもあります。公募期間は短いので、締切間際に慌てないよう、早め早めの準備が不可欠です。お金がもらえるのは後払い(精算払い)が基本 これが最も重要な注意点です。補助金は、先に契約書を交わして事業を開始し、かかった費用を一度すべて自己資金で支払った後に、報告書を提出して初めて振り込まれます。つまり、ECサイト構築費が100万円かかった場合、まず100万円を自社で立て替える必要があるのです。補助金が入るまで持ちこたえられる資金計画が不可欠です。採択されても手続きは続く 「採択決定=ゴール」ではありません。補助金を受け取るためには、事業が終わった後に「計画通りに事業を実施し、これだけの経費を使いました」という実績報告書を提出する必要があります。その際、支払いを証明する領収書や契約書などの証拠書類がすべて必要になるため、きちんと整理・保管しておくことが非常に重要です。審査に落ちる可能性も考えておく 補助金は、申請すれば必ずもらえるわけではありません。事業計画の内容が厳しく審査され、残念ながら採択されないケースも多々あります。補助金がなくても事業が遂行できるような、無理のない資金計画を立てておくことが、リスク管理の観点から非常に大切です。今回は、ECサイト構築や事業拡大に役立つ補助金について解説しました。最後に、本日の重要なポイントを3つにまとめます。
準備は大変ですが、補助金を活用できれば事業を大きく成長させるきっかけになります。この記事が、皆様の事業を次のステージへ進める一助となれば幸いです。