ECサイト構築や事業拡大に使える補助金・助成金ガイド【初心者向け徹底解説】

ECサイト構築や事業拡大に使える補助金・助成金ガイド【初心者向け徹底解説】

これから事業を始める方や、ECサイト構築などを通じて事業拡大を計画されている中小企業・個人事業主の皆様へ、返済不要の事業資金「補助金」について解説します。

ECサイトの構築や事業拡大にはコストがかかりますが、国や自治体の制度をうまく活用すれば、その負担を大きく減らせることをご存知ですか?

国や自治体には、返済不要の資金で事業をサポートしてくれる「補助金」という心強い制度があります。この記事では、補助金・助成金の世界を、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。

この記事でわかること

  • 補助金と助成金の根本的な違い
  • 事業拡大に使える5つの主要な補助金の概要
  • 補助金申請前に知っておくべき重要な注意点

1. 「補助金」と「助成金」はどう違う? 基本のキを理解しよう

資金調達の話でよく耳にする「補助金」と「助成金」。どちらも返済不要のお金ですが、その性質は大きく異なります。まずは、この2つの違いをしっかり理解しておきましょう。

  • 補助金とは 国や自治体が設定した政策目標(例:新規事業の促進、生産性向上など)に合った事業を行う事業者に対して支給されるお金です。主に経済産業省などが管轄しており、申請内容が審査され、採択される必要があります。
  • 助成金とは 主に雇用の安定や労働環境の改善などを目的として支給されるお金です。厚生労働省が管轄しており、定められた要件を満たしていれば、基本的に受給することができます。

両者の主な違いを、下の表で比べてみましょう。

比較項目補助金助成金
目的新規事業や設備投資など、国の政策実現雇用の安定や労働環境の改善など
管轄主に経済産業省、中小企業庁、自治体など主に厚生労働省
受給の難易度審査があり、採択されない場合もある(競争)要件を満たせば原則受給できる
公募期間期間限定(1週間〜1ヶ月程度が多い)通年で募集していることが多い
予算予算上限に達すると期間内でも終了する場合がある予算が比較的安定している

つまり、新しいチャレンジを目指すなら「補助金」、雇用を守り育てるなら「助成金」と覚えておくと分かりやすいでしょう。では次に、ECサイト構築や事業拡大に具体的に使える5つの主要な補助金を見ていきましょう。

2. ECサイトや事業拡大に使える!中小企業向け主要補助金5選

国が提供する補助金には様々な種類がありますが、ここでは特に中小企業が使いやすい主要な5つの制度をピックアップしてご紹介します。まずは全体像を掴んでみましょう。

補助金名こんな人におすすめ!補助額(最大)
事業再構築補助金思い切った新事業や業態転換に挑戦したい事業者最大7,000万円(従業員規模等による)
ものづくり補助金革新的な新製品・サービス開発のための設備投資をしたい製造業者など最大2,500万円(従業員規模等による)
小規模事業者持続化補助金小規模事業者が販路開拓や生産性向上に取り組みたい場合最大50万円(通常枠)
IT導入補助金ITツールを導入して業務効率化や生産性向上を図りたい事業者最大450万円
中小企業省力化投資補助金IoTやロボットなどを導入して人手不足を解消したい事業者最大1,500万円

※表中の補助額は通常枠や基本要件での上限です。大幅な賃上げ等の追加要件を満たすことで、上限額が引き上げられる場合があります。

それでは、一つひとつの補助金を詳しく見ていきましょう。

事業再構築補助金

  • 一言でいうとコロナ禍などの社会経済の変化に対応するため、新しい分野へ挑戦する事業者を応援する、パワフルな補助金です。
  • どんなことに使える? 思い切った事業転換に必要な経費が幅広く対象になります。
    • 建物の新築・改修費
    • 機械装置やシステムの構築費
    • クラウドサービス利用費(ECサイト構築費用も計上可能)
    • 技術導入費
    • 専門家経費
    • 広告宣伝・販売促進費 など
  • ポイント 補助金額が非常に大きいのが魅力ですが、その分、詳細な事業計画書の作成が求められ、申請要件も複雑です。金融機関などの専門家と連携して準備を進める必要があります。

ものづくり補助金

  • 一言でいうと? 「ものづくり」という名前ですが、製造業に限らず、革新的な新製品や新サービス開発に必要な設備投資を支援する補助金です。
  • どんなことに使える? 生産性向上に繋がる設備やシステム導入が対象です。
    • 最新の機械装置の購入費
    • 生産管理システムの構築費
    • クラウドサービスの利用費 など
  • ポイント この補助金は生産性向上を目的としているため、その成果を従業員に還元することが求められます。具体的には、①給与支給総額の増加②事業所内最低賃金の引き上げという2つの賃上げ目標を達成する必要があります。万が一、目標を達成できなかった場合は、補助金の一部または全部を返還しなければならないため、計画的な賃上げが不可欠です。

小規模事業者持続化補助金

  • 一言でいうと? チラシ作成やネット広告、店舗改装など、小規模事業者の「販路開拓」を後押しする、最も身近で使いやすい補助金の一つです。
  • どんなことに使える? お客様を増やすための様々な取り組みが対象です。
    • 広報費(チラシ、パンフレット、広告掲載など)
    • ウェブサイト関連費(ECサイトの構築・更新費用など)
    • 展示会への出展費用 など
  • ポイント ECサイト構築に使える「ウェブサイト関連費」には注意点があります。これ単体での申請はできず、補助金申請額全体の1/4までという上限が設けられています。他の販路開拓の取り組みとセットで申請する必要があります。

IT導入補助金

  • 一言でいうと? 会計ソフトや顧客管理システム、ECサイト作成ツールなど、日々の業務を効率化するITツールの導入を支援する補助金です。
  • どんなことに使える? 生産性向上に役立つソフトウェアやクラウドサービスが対象です。
    • ソフトウェア購入費
    • クラウド利用料(最大2年分が対象になることも)
    • 導入関連費(導入サポートや研修費用など)
  • ポイント どんなITツールでも良いわけではなく、事務局に事前に登録されている製品・サービス(IT導入支援事業者が提供するもの)の中から選ぶ必要があります。まずは自社の課題を解決できるツールが登録されているか確認しましょう。

中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)

  • 一言でいうと? 深刻化する人手不足を解消するため、カタログから選ぶような手軽さでIoT機器やロボットなどを導入できる補助金です。
  • どんなことに使える? 事務局が作成した「製品カタログ」に掲載されている省力化製品の導入経費が対象となります。
    • 自動清掃ロボット
    • 配膳ロボット
    • 自動券売機 など
  • ポイント この補助金は、人手不足解消と従業員の待遇改善を同時に目指す制度です。そのため、申請要件には事業場内の最低賃金を年間45円以上引き上げるといった賃上げ目標の達成が含まれています。

国の大きな制度だけでなく、もっと身近な自治体にもチャンスがあります。次に、お住まいの地域で探せる補助金の例を見てみましょう。

3. お住まいの地域にもあるかも?自治体の補助金制度

国の補助金に加えて、都道府県や市区町村といった各自治体も、地域の中小企業を支援するために独自の補助金制度を設けています。ぜひ「(あなたの自治体名) 補助金」で検索してみてください。

国の制度よりも対象が絞られている分、より自社のニーズに合ったものが見つかるかもしれません。

【具体例】

  • ECサイト活用補助金(東京都中央区)
    • 区内の中小企業が初めてECサイトを構築する費用の一部を補助。
  • ICT活用生産性向上・事業変革促進支援事業(千葉県千葉市)
    • 市内の事業者が働き方改革や生産性向上のためにICTツールを導入する費用を補助。

これらの例のように、ECサイト構築に特化したものなど、よりピンポイントな支援があるのが特徴です。ただし、自治体の補助金は予算規模が小さく、公募期間も短いことが多いです(上記の2制度も令和6年度分は受付を終了しています)。こまめに自治体のホームページをチェックすることが重要です。

このように魅力的な補助金ですが、申請する前にはいくつか知っておくべき大切な注意点があります。失敗しないために、次のポイントを必ず押さえておきましょう。

4. 申請前に必ずチェック!補助金の4つの注意点

補助金は事業の追い風になりますが、良いことばかりではありません。申請してから後悔しないために、以下の4つの注意点を必ず頭に入れておいてください。

  1. 申請手続きは想像以上に大変 補助金の申請は、申込書を一枚書けば終わり、という簡単なものではありません。事業の目的や将来性、資金計画などを詳細に記述した事業計画書の作成が必須です。また、電子申請には「gBizIDプライム」というアカウントが必要で、この取得には1〜2週間かかることもあります。公募期間は短いので、締切間際に慌てないよう、早め早めの準備が不可欠です。
  2. お金がもらえるのは後払い(精算払い)が基本 これが最も重要な注意点です。補助金は、先に契約書を交わして事業を開始し、かかった費用を一度すべて自己資金で支払った後に、報告書を提出して初めて振り込まれます。つまり、ECサイト構築費が100万円かかった場合、まず100万円を自社で立て替える必要があるのです。補助金が入るまで持ちこたえられる資金計画が不可欠です。
  3. 採択されても手続きは続く 「採択決定=ゴール」ではありません。補助金を受け取るためには、事業が終わった後に「計画通りに事業を実施し、これだけの経費を使いました」という実績報告書を提出する必要があります。その際、支払いを証明する領収書や契約書などの証拠書類がすべて必要になるため、きちんと整理・保管しておくことが非常に重要です。
  4. 審査に落ちる可能性も考えておく 補助金は、申請すれば必ずもらえるわけではありません。事業計画の内容が厳しく審査され、残念ながら採択されないケースも多々あります。補助金がなくても事業が遂行できるような、無理のない資金計画を立てておくことが、リスク管理の観点から非常に大切です。

5. まとめ

今回は、ECサイト構築や事業拡大に役立つ補助金について解説しました。最後に、本日の重要なポイントを3つにまとめます。

  • 補助金は、事業計画の質が問われる「競争資金」である。 返済不要の強力な資金ですが、審査があるため、採択されるには説得力のある事業計画が不可欠です。
  • 事業の「目的」に合った補助金を選ぶことが採択への近道。 IT化、販路開拓、事業転換など、自社が目指すゴールに最も適した制度を選ぶことが重要です。
  • 資金繰りの計画が最重要。「後払い」の原則を理解し、自己資金で事業を先行させる体力が必要。 補助金はすぐには入金されません。事業費を一時的に全額立て替えることを前提とした資金計画を立てましょう。

準備は大変ですが、補助金を活用できれば事業を大きく成長させるきっかけになります。この記事が、皆様の事業を次のステージへ進める一助となれば幸いです。

 株式会社 iPLUS ONE